近年、冬とは思えないほど気温が高い“暖冬”が増えています。
「寒くなくて助かる」「光熱費が減って嬉しい」と感じる一方で、
暖冬には“大きなメリット”と“深刻なデメリット”の両方があります。
防災士の視点で、
暖冬が暮らし・防災・健康にどんな影響を与えるのか を整理しました。
■ 暖冬のメリット
暖冬には生活面でのプラス効果も多く、家庭の負担を軽くしてくれる面があります。
● ① 光熱費が下がりやすい
暖房の使用が大幅に減るため、
- 電気代
- ガス代
- 灯油代
が減少します。
特に冬の暖房費は家計の負担が大きいため、メリットとして感じやすい部分です。
● ② 外出や運動がしやすくなる
暖冬は身体の負担が軽く、外出しやすい環境になります。
- スポーツ
- 買い物
- 通勤・通学
がスムーズで、ケガや事故のリスクも減ります。
● ③ 路面凍結や大雪が減り、交通が安定
暖冬の年は道路凍結・積雪が減りやすく、
- 交通事故の減少
- 通勤・通学の安定
- インフラの遅延が少ない
など、社会生活がスムーズに進みます。
● ④ 暖房器具の使用による火災リスクが下がる
石油ストーブ・電気ストーブなど、
冬の火災原因の多くは暖房器具。
使用頻度が減ることで、火災の発生率が下がるメリットがあります。
● ⑤ 体調面での負担が軽くなる
寒さは身体へのストレス。
暖冬は、
- 血圧の急上昇が少ない
- 心筋梗塞・脳梗塞などの冬のリスクが減る
- 入浴中のヒートショックが起こりにくい
など、“健康リスクの低下”にもつながります。
■ 暖冬のデメリット(防災士としてはここが最重要)
暖冬にはメリット以上に、
防災上の大きなデメリット が存在します。
気温が高い=安全
ではありません。
● ① 暖冬の翌年は“大型台風”が発生しやすい
暖冬の原因の多くは、
✔ 海水温の上昇
つまり海が温められた状態。
海水温が高いと、
台風が勢力を増しやすく、巨大化しやすくなる
という明確なデメリットがあります。
暖冬の翌夏は、
台風リスクが上がることを知っておく必要があります。
● ② 春〜夏の豪雨(線状降水帯)の発生率が上昇
暖冬により大気中の水蒸気量が増えると、
次の災害が増えます。
- 梅雨の豪雨
- 突発的なゲリラ豪雨
- 線状降水帯の発生
暖冬は「水害の当たり年」になることが多いです。
● ③ スギ花粉が“大量飛散”しやすい
暖冬だとスギの芽が早く成長し、
春の花粉量が増加することがわかっています。
花粉症の人にとっては大きなデメリット。
● ④ 虫が越冬しやすく、害虫被害が増える
気温が高いと、
本来冬に死ぬはずの虫がそのまま生き残ります。
- 蚊
- ゴキブリ
- ダニ
- ハチ
これらが大量発生しやすくなるのが暖冬の特徴。
夏の衛生リスクが増えるため、防災備蓄の衛生用品の見直しが必要になります。
● ⑤ 冬の感染症(インフル・ノロ)が長引く
暖冬の年は、
- インフルエンザのピークが遅れる
- 流行期間が長くなる
- ウイルスが広がりやすい環境が続く
という医療面のデメリットがあります。
● ⑥“春の水不足”が起きやすくなる
雪が少ない=雪解け水が減るため、
春〜夏にかけての水不足を招くことがあります。
- ダム水位の低下
- 農業被害
- 断水リスクの上昇
にもつながるため、暖冬の翌年は「水の確保」が重要。
● ⑦ 農作物の不作・価格高騰
暖冬によって季節の進み方が狂うと、
- 野菜の成長不良
- 収穫時期のズレ
- 害虫被害の増加
などが起こり、食料価格が上がりやすくなります。
■ 暖冬は“楽な冬”ではなく“災害の前兆”
暖冬は確かに生活が楽になりますが、
防災士の視点では“次の災害のシグナル”と捉えます。
✔ 海水温上昇 → 夏の台風巨大化
✔ 大気中の水蒸気増加 → 豪雨多発
✔ 雪不足 → 春の水不足
✔ 害虫増加 → 夏の衛生リスク上昇
暖冬=災害の布石
という認識がとても大切です。
■ まとめ:暖冬のメリットを享受しつつ、デメリットへの備えを強化する
暖冬には良い面も多いですが、
自然災害への“次の負荷”がかかる年でもあります。
【メリット】
- 光熱費が減る
- 活動しやすい
- 凍結事故が減る
- 健康リスクが軽減
- 火災が減る
【デメリット】
- 台風が強くなりやすい
- 豪雨の発生率が上昇
- 花粉大量飛散
- 虫が越冬して夏の衛生リスク増
- 感染症が長引く
- 水不足につながる
- 農作物の不安定化
暖冬は“今は楽だが、春・夏に負荷が回る”季節変動です。
メリットを活かしつつ、
デメリットを防災対策でしっかり補うことで、
年間を通した安全性が高まります。
次の災害に備える力を、
暖冬のうちに整えておきましょう。

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