大勢の人が押しつぶされる「群衆事故」は、地震や火災がなくても命を奪う危険な災害です。
韓国で発生した人なぎ倒し事故も、自然災害が理由ではなく、**人が密集したことで起きた“人の災害”**でした。
なぜ多くの被害につながったのか?
どこに危険が潜んでいたのか?
二度と同じ悲劇を起こさないため、防災士の視点で解説します。
◆ なぜ人がなぎ倒されるような大事故になったのか?
群衆事故には、共通した原因があります。
・狭い道、狭い建物に人が密集
・人が立ち止まり、押し返す力が働く
・“前に倒れる”ではなく、“横に押しつぶされる”
・圧力で呼吸ができなくなる
・転倒者が出ると、次々と倒れドミノ現象が起きる
特に危険なのは、人が前に進もうとする力と、逆方向から押し返す力がぶつかる時です。
地面に倒れなくても、圧迫だけで命を落とすことがあります。
事故当時は、
・狭い通路に大量の人が集中した
・人が止まって動けない状態になった
・押されて避けようにも身動きできなかった
こうした条件が重なり、逃げられない状況になったとされています。
◆ 群衆事故は「パニック」が原因ではない
多くの人が誤解しがちですが、
群衆事故は「人が暴れたから」起きるのではありません。
多くの場合、
・誰も暴れていない
・誰も走っていない
・誰も怒鳴っていない
それでも起きます。
原因は「人が密集しすぎた」という一点です。
人が1平方メートルに6人以上になると、もう自分の意思で動けません。
これを超えると、身体は周りに任され、自分の足で歩いている感覚さえなくなります。
◆ 防ぐために必要だったこと(一般論)
・一方通行など、人の流れをコントロールする
・狭い道に人が集中しないよう誘導する
・現場の人数を把握し、危険密度になれば立ち入り制限
・警備員・警察・イベント主催側の誘導体制
・人が滞留しやすいポイントを事前に確認
・交通規制や周辺の人員配置
群衆事故は「対策が難しい災害」ではありません。
人が流れる方向を作るだけで、命が守られます。
◆ 私たちが個人でできる命の守り方
・密集場所に長時間とどまらない
・押される感覚を覚えたらすぐ離脱
・人が動かなくなるほど混んでいたら別の道へ
・「列が逆方向に動く場所」は危険
・小さな子どもを連れている場合は特に近づかない
・背中と胸を守る姿勢を取り、体をねじれさせない
圧迫が起こると呼吸ができなくなり、数十秒で危険になります。
自分の体を守ることは、周りの人を守ることにもつながります。
◆ まとめ
・群衆事故は災害の一種であり、誰でも巻き込まれる
・パニックではなく、「密集」が原因
・狭く、人が止まる場所は最も危険
・対策は「人の流れを作る」こと
・個人も、危険を感じたら早めに離れることが命を守る
自然災害とは違い、群衆事故は防げる災害です。
人の命は守れます。
私たちが知り、行政と社会が学び、対策すれば、同じ悲劇を繰り返さない未来に変えられます。

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