火災現場には、見えない危険が数多くあります。
その中でも特に注意すべきなのが 「すす(煤)」に含まれる発がん性物質。
火災の煙・すすは“ただ汚れるだけ”ではなく、
吸入・皮膚付着で健康被害を引き起こす化学物質のかたまり です。
消防士として長年現場に立つ人、
火災後の片付けに入る住民、
災害ボランティアも知っておくべき重要な知識をまとめます。
■ ① 火災の「すす」とは何か?
火災現場の“すす(煤)”は、
燃えきらなかった炭素や化学物質が混ざった 超微細粒子。
木材や紙だけでなく、
現代の建物はプラスチック・合成樹脂・家具・電気製品が多いため、
火災時には大量の有害物質が発生します。
■ ② すすに含まれる代表的な発がん性物質
火災の煙・すすには次のような物質が高濃度で含まれることがあります。
● ① ベンゾ[a]ピレン(強い発がん性)
タバコ煙にも含まれる有名な発がん物質。
● ② ダイオキシン類
高温燃焼で生成される有害化学物質。
免疫・生殖・発がんリスクが懸念。
● ③ ポリサイクリックアロマティックハイドロカーボン(PAHs)
プラスチック・樹脂が燃えると多量に発生し、
発がん性が指摘されています。
● ④ アスベスト(古い建物の場合)
古い建築物が燃えると飛散する可能性。
肺がん・中皮腫のリスク。
● ⑤ 微小粒子(PM2.5)
肺の奥まで入り込み、心肺にダメージ。
■ ③ なぜ“火災現場のすす”が特に危険なのか?
● ① 粒子が極めて細かい
→ 呼吸で簡単に肺の奥深くまで侵入する。
● ② 皮膚からも吸収される
→ 消防士のがんリスクが問題視されている最大の要因。
● ③ 消火後も数時間〜数日、現場に残る
→ 片付け・捜索作業で吸い込むケース多数。
● ④ 温度が下がると付着しやすい
→ 顔・髪・首・手の「露出部」に大量付着。
■ ④ 消防士にがんが多いと言われる理由
海外ではすでに
消防士は発がんリスクが高い職業 として認定されている国もあります。
原因の中心は:
● すす(PAHs等)
● 有毒ガス
● 化学物質
● 皮膚曝露(顔・首が最も多い)
日本でも研究が進み、
「火災現場の化学物質曝露」は注目され始めています。
■ ⑤ 一般の住民が影響を受けるケース
火災後の片付け・掃除で…
● 焼け残った家財を運ぶ
● 壁・床の煤を拭く
● 家財の選別をする
● マスクなしで作業する
こうした行動で 吸入・皮膚付着 が起きる可能性が高い。
特に子どもは呼吸量が多く、影響が大きいことが懸念されます。
■ ⑥ 火災現場の「すす」から身を守る方法(最重要)
★① N95マスク・防塵マスクを使用
普通の不織布マスクでは PM2.5やPAHsは通過 します。
★② 露出部を完全に覆う
火災後の現場作業では:
● 長袖
● 手袋
● ゴーグル
● 首回りの保護
が必須。
★③ 作業後はすぐにシャワー
煤が皮膚から吸収されるのを防ぐため、
作業後30分以内が理想。
★④ 衣類は“別に洗う”
すすは他の衣類に移るため、家族の洗濯物と混ぜない。
★⑤ 子どもは火災現場に近づけない
特に火災直後は煙や煤が舞いやすい。
■ ⑦ 火災後の片付けはプロに依頼も検討
焼け焦げ・煤・臭いの除去は、
専門業者でなければ完全に処理できないことが多い。
● すす除去
● 消臭
● 有害物質の除去
● 構造安全の確認
住民が自分で行うより、安全で確実。
■ ⑧ まとめ
火災現場の“すす”は、
強い発がん性物質を含む危険な粉塵。
- PAHs・ベンゾ[a]ピレン・ダイオキシン類などが多く含まれる
- 吸入・皮膚吸収で健康被害が起きる
- 消防士の発がんリスクが世界中で問題に
- 一般住民も片付け時に注意が必要
- マスク・防護具・洗浄が必須
- プロによる清掃依頼も有効
火災後のすすは“ただの汚れではない”。
知っておくだけで、自分と家族の健康を守れる大切な知識です。

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