企業・自治体・学校・福祉施設が
災害後も業務を継続するための計画が BCP(事業継続計画)。
しかし防災士として現場を見てきた中で感じるのは、
「BCPが機能しない組織が圧倒的に多い」 という現実です。
BCPは “紙では企業を救えない”。
今回は地震対策の課題16
「BCPの未整備・未実行」 を深掘りします。
■① BCPを“作っていない”企業がまだ多い
中小企業では特に、
- そもそもBCPを知らない
- 重要性を理解していない
- 担当者がいない
などの理由で、
計画自体が存在しないケース が多いのが現状です。
地震後は復旧に遅れ、最悪廃業にもつながります。
■② 作っただけで“運用していない”
BCPがあっても、
- 書棚で眠っている
- 作成した担当者が異動
- 更新せず古い情報のまま
- 全社員が内容を知らない
など、「作成=対策完了」になってしまう組織が多いです。
これは、
実際の災害では全く役に立ちません。
■③ 重要業務(中核業務)が特定されていない
本来BCPは、
- 絶対に止めてはいけない業務
- 優先度の高い事務
- 最低限維持すべきサービス
を明確に定める必要がありますが、多くの組織が曖昧なままです。
結果、
- 何を守るべきか判断できない
- 復旧の順番が決められない
- 混乱して業務が止まる
という状況に陥ります。
■④ 代替手段(バックアップ)が用意されていない
地震後に必要なのは“代わりの手段”です。
しかし多くの組織では、
- 代替拠点がない
- 在宅勤務の準備がない
- 紙の書類が全て破損
- データのバックアップ不足
など、バックアップ体制がなく復旧できない ケースが多く見られます。
■⑤ 人員配置が不十分で、災害時に動けない
BCPに必要なのは「誰が動くか」です。
しかし、
- 役割分担が決まっていない
- 担当者が出勤できない
- 自宅の家族対応で動けない
- 人手不足で代わりがいない
など、 人の問題 が最大の障害になります。
■⑥ サプライチェーンの破断を想定していない
BCPは自社だけでは完結しません。
- 取引先の被災
- 工場の停止
- 物流が止まる
- 電力・水・通信の停止
こうした“サプライチェーンの崩壊”が
想定されていない組織が非常に多いです。
■⑦ 訓練やシミュレーションがほぼ行われていない
BCPが機能するかどうかは、
訓練で初めて分かる
のですが、
- 訓練をしていない
- 形式的な会議だけ
- 実際の手順を動かしていない
ため、本番で動けない組織がほとんどです。
■⑧ BCPを機能させるには“シンプル・共有・反復”
BCPは難しいほど動けなくなります。
◎実効性を高めるポイント
- シンプルな手順にまとめる
- 全社員が理解できる形にする
- 年1回は訓練する
- 担当者の代替を複数名作る
- 文書だけでなくデジタルで共有
- データバックアップを確実に実施
“現場で使える計画”であることが重要です。
■まとめ|BCPは“紙の計画”ではなく“動く計画”。命と事業を守る生命線
地震対策の課題16
「BCPが機能しない・整備されていない問題」 は、
災害後の復旧スピードと組織の存続を左右する重大テーマです。
- BCPが未作成
- 作って終わり
- 中核業務が不明
- 代替手段なし
- 人員不足
- サプライチェーンの盲点
- 訓練不足
結論:
防災士として、BCPは“会社の命綱”。作るだけでは意味がなく、動かせる計画こそ本物です。

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